第一回公演「丑三つゴブリン!」
【誌上劇団!ポップノベル】
【第一回公演】
「丑三つゴブリン!」
文/ポップ闘志
①
丑三つ時にスポーツセンターを歩いている人がいるとする。怖いと思う人はゴーストが現れたと思うだろう。ホラー映画チックな出来事を想像するだろう。
「怖いなあ!怖い怖い。深夜のスポーツセンターは怖い怖い」
と、警備員補佐が言う。
後ろから「警備員補佐!後ろ!後ろ!」と叫んでやりたいけど可哀想だからやめた。
そうして警備員補佐が館内を回る。
「頭の中はB級ホラー映画さ!」
そうは言っても明るい口調で頭の中でメラとかメラゾーマを唱えてもホイミで回復をしたりしても意味が無い。たとえ、言葉の
ホイミだとしても、だ。
②
薄気味悪い感じはしていた。まさに薄気味悪いのオンパレードで「薄気味悪い感じの
怪しい書物を販売しているホラー業界では人気で話題の書店か?深夜にそんな書店に行ったら怖いだろ!怖い怖い!」とか自意識過剰チックな事を考えていた。そしたら
本当に自意識過剰を超越する事態が発生。
果たして!
③
そう。そこにいたのは、薄気味悪い顔面の中年男性が地べたに座っていた。一瞬、
ビックリしたけど、ビックリマンのゼウスシールを見つけた時よりはビックリしない自分の感情に「おい!馬鹿野郎!トラック野郎か?荷物が危険物のサラダ油だったら
承知しねえぞ!スタンド使うぞ!ジョジョの!スタンドを!」
と怒りたくなった。
だが、すぐに怒りは冷めてクーラーやらの効果で冷たくなった。心はホットコーヒーやらホットポタージュやらホットシリアル並の温かさだった。
④
「声をかけてみようか?」
誰もいないのにそんな疑問を抱いている。
でも、単調な言葉ではあんなに濃厚な薄気味悪い顔面の中年男性に敵うだろうか?
一度、スリーピーして睡眠の世界に入ろうとしてみるが、そうしたら負けている感じになっちゃうので、早すぎる思考停止に、
ファイブレインのブレイン、つまり脳みそ
が破裂しそうになったのだ。勇気を出して薄気味悪い顔面の中年男性に、丑三つ時に
話しかけてしまった。中年男性はホクホクの男爵イモを食いながらムーンウォークしていて眺めてるとこっちへ向かってきた。
⑤
突然!謎の音楽が流れ始めたのだった。
「ミュージック?ミュージックなのか?」
疑問が浮かび上がってきた。妖怪ケムリの
ケムリが浮かび上がってきたのと同じだ。
ラジオ体操か新体操か体操の音楽が最初に流れ出した。流れ出る溶岩みたいだった。
「溶岩風呂にクーラーを設置したら?」
誰も上がってこないだろう。クーリッシュのバニラ味を吸ってるみたいだった。普通のマックシェイクと変わらないあの味には価格が数円安くて消費税が増税したからかマックシェイクの一人勝ちであった。
すると、館内には更に音楽が流れ出した。
ホラーベースの音楽で映画「ゾンビ」的なゴブリンのサントラみたいだ。よく聞くと
ゴブリンとバイオハザードとヒッチコックのミクスチャー音楽らしいと判明してきたのだった。アメリカの野外映画館でホラー映画を三本立てで見ている若い頃を思い出してきた。アメリカとかの映画はよく知らないけれど。
⑥
よく聞くと「スリラー」だった。音楽の主はマイケルだった。
「でも何でマイケル?ナンセンス的だ!」
そう。まさにムービーナンセンス。こんな時間にマイケル?ナンセンスの王道だな!
と思える程だ。この建物が何だか巨大墓石に見えて、巨大墓石の中でマイケルの音楽が流れて、こうやって警備している自分がいる。何ともナンセンスだった。建物が、
ディスコミュージックハウスくらい揺れて
軽い地震みたいだ。いや、巨大墓石がまだ
生きている感じなのだ。生きていて音楽を奏でている。演奏している。もちろんゴブリンもだが。ハウスミュージックみたい。
ホラーミュージックなのに。
⑦
館内にスリラーが流れてから何分か経ったのは時計を見て確認した。砂時計からは、
砂の器の書籍の、それも、砂の器の中古本の香りがした。砂時計ではなくてスマートフォンで確認したのだが。スリラーの歌をよく聞いて翻訳していると、こんな歌詞があった。「♪ゴブリン〜!大好き〜!」とマイケルも、そしてスリラーの作詞者も、
みんな、ゴブリンサウンドが好きらしい。
空耳かもしれない。空耳アワーかもしれないけれど、空耳アワーの耳かき、をゲットするつもりでゴブリンサウンドに挑んだ。
スリラーが流れてから、流れ終わると窓辺には太陽が照らされていた。