誌上劇団!ポップノベル

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小説「うなずき」

【小説/第一幕】

文/ポップ闘志

「うなずき」

コルクボードにスポーツ新聞の切り抜きが
押しピンで支えてある。落ちていくこともなく、ただ支えるだけの仕事。それが押しピンの役目だ。本日も押しピンは支えてて
何人かの人が切り抜きを持って帰る。漫画の記事だった。「持ち帰り自由」のスポーツ新聞の切り抜きで人気が出たお店だ。
しかし、そんな店を震え上がらせる出来事が起こった。押しピンを抜いて記事を持ち帰ろうとしてたら押しピンが指に食い込んだ。辺りは血のカリブ海になり、すぐ止血した。海軍みたいな店長のテキパキとした
止血術には驚く。押しピンは辺りから姿を隠して店長の「誰も悪くないさ!」の一言で救われた。「押しピン意外!(笑)」と
冗談を言った。嫌な思いにはならない程度の冗談だったので許せた。憎めない性格の店長なのだろう。たった今から珈琲を作り始めた。美味しいんだろうなあ。

【小説/第二幕】

へぇーボタンを押してみた。久しぶりに物置から出したオモチャのボタン。何度押しても「へぇー」としか言わない。それらを
持って近所の店へ行ってコーヒーを飲もうとしていた。店でゲームをしてみるかと思い、ドラクエファミコンごと持って行こうか?ファイナルファンタジースーパーファミコンごと持って行こうか悩んだりしていた。結果、二台のゲーム機ごと持って行くことに。

電車に揺られながら、ゲーム機を持参して目的地の隣の駅まで、たどり着いた。
隣の駅だって近所といえば近所だろう。
しゃもじ片手に歩いているわけでは無い。
チョロチョロと歩いていたら珈琲を飲みに行く店まで、たどり着いた。店は大騒ぎで
外からも聞こえてくる叫び声。中を見ると
意外にシーンとしていた。店で流している映画「両腕ジュウドウ!地を這う花火」を
流していたのだった。しかし、まだ叫び声が聞こえる。何だか状況も読めなかったが
大体は予想がついた。血を出している人に
目をやると血の海があったのかもしれないだけど、スケールが小さかった。だから、大丈夫。ゲーム機を鞄から取り出すと「あっ!ゲーム禁止!」と店長に言われた。だけど、肝心なことに、気づいたのだ。コルクボードから押しピンを思い切り抜いて押しピンでへぇーボタンを押して見せた。すると、どこからか海外の人たちが集まり始めて、まるでイベントでも行われているのかと思う程だ。そして胴上げをされて、いつの間にやら家の中の布団に横たわっていた。布団から出て食事の準備をしていると、何かが鳴った。寝室の机の上に置いてある、へぇーボタンの音が鳴っていたのだった。鳴っているけど、一旦スルーして「何か」を探す。「あった!」鳴っている、へぇーボタンを押しピンで、押して音が鳴るのを止めた。それは夢の中で目撃をした幻想なのかもしれない。いかんせん、もう、へぇーボタンはあの頃とは違う。壊れて無くなってしまったのだ。しかし、覚えている。あの、へぇーボタンの機械に押しピンの傷があることを。(終)